
(※動画の紹介以外に、感想が載っていますが長文かつ動画のネタバレを含みます。動画のみ見たい方は上だけを閲覧ください。)
こちらはかの推理小説の大家、江戸川乱歩氏の名作「押絵と旅する男」をベースにした秘封MMDです。
物語の導入は、小鈴がある日蜃気楼を見に湖(霧の湖?)に行くと、上空に「大きくてピカピカ光る建物の群れ」(おそらく外界)が写っているのを目撃してしまい、その影響か妙な世界に迷い込んでしまう・・・。というお話。
個人的にこの作品は乱歩と東方が好きな方なら必見だと思います。そして原作を知らない方でもとても楽しめると思いますし、もしこれで原作に興味をもたれたら、ぜひ書店などで手に取ってみてください。
(以下感想文です。長文かつネタバレ含みます。未視聴の方でネタバレが嫌な方はお引き返しください。)
さてこの動画には、随所に原作を上手くアレンジしている箇所が見受けられ、原作を読んだことのある方ならハッとする場面が多いと思います。
まず冒頭の蜃気楼を見に行ってから列車に乗るシーン。ここを異変への入口にしているのは原作も同じなのですが、この動画では蜃気楼として外界を見せることで、外界との境界が歪んでいることを意識させ、小鈴を列車という一般的な幻想郷の住人には縁のない乗り物に無理なく当てはめています。また蓮子に関するシーンは挨拶の部分も含め原作に忠実なのですが、なぜか全く違和感ありません。親和性高いなあ・・・。
次に押絵にメリーと蓮子が入ってしまうシーン。原作では押絵の中の美少女に惚れた男が押絵に入ってしまうのですが、その際カギとなったのは押絵自体ではなく遠めがねで、押絵自体は普通(?)の押絵でした。しかし、この動画では「押絵=幻想郷の景色&過去の出来事を映し出すもの」とすることで絵の魅力を表現し、メリーが押絵の中に入ろうとする動機を上手く作り出しています。また押絵の少女に惚れた男が押絵に入ってしまう原作でも重要なシーンも、メリーの失踪をきっかけに絵の中に興味を強く持った蓮子が遠めがねを逆さに覗き(覗かされ?)絵の中=幻想郷に入ってしまう、という蓮子の好奇心が動機になっていて上手いなあ、と感嘆させられました。
というのもおそらく原作の「押絵の中に入った男」=蓮子だと思いますが、原作で見られた「押絵の中に入った男」の度を越した執着を、この蓮子も持っていることを彼女のセリフから感じることができたからです。
「メリーばっかり、ずるい!」「連れてって!」「私もそっちに連れてって!」
絵の中にいるのが本当に親友であるのかもわからず、ましてや絵に人が入ってしまうという(如何に2人が境界を見続けてきたにしても)あまりにも非現実的な現象を目の当たりにしても、絵の中のメリーにこのセリフを発することができる蓮子。
原作では男は毎日12階建ての建物に登り、最上階から片思いの女性を双眼鏡で探し続けていました。その男と同じ執着を蓮子が持っていると感じさせるこの描写はとても秀逸だと思います。
しかし原作では押絵の中に入った「兄」は、伴侶である少女が老いない(少女はあくまで絵であるため変化しない)ため、絵の中に入ったあとも老い続ける自分とのギャップに苦悶する様が描かれていました。もしかすると、蓮子を兄、メリーを少女と捉えるとこの後の2人の結末は・・・?
あともう一つ。個人的にはメリーがどこで遠めがねのことを知ったのか疑問があります。普通、絵に入ろうとして遠めがねってなかなか無い発想だと思うんですが、もしかするとメリーさん実は乱歩を知ってたとか・・・?
さてそんな2人の絵に魅せられてしまった小鈴ちゃんは、2人のように絵を逆さの遠めがねで覗いてしまいますが、そこで意識は暗転しふと気が付くと元の世界に戻ることができていました。しかし、小鈴ちゃんが戻ってこれた幻想郷は果たして最初にいた幻想郷なんでしょうか?もしかすると、そこは絵の世界なのかも・・・?
というところで話は終わります。個人的には動画の表現や描写はとてもツボでしたし、秘封の2人やあきゅすずが可愛かったり怖かったりでとても魅力的でした。ややホラー系の描写もありますが(グロはもちろんありません)、ぜひぜひ一度見ることをおすすめしたい東方動画です。
ここまで乱筆乱文にお付き合いいただき誠にありがとうございました。
おそらく原作では夢と現が混ざった世界だったのでしょうけど
舞台を幻想郷にした事で入れ籠になったまるで合わせ鏡のような世界観を感じました